ひょんな事から僕の所にやって来た小さな(だって僕より背が低い)死神テッド、そんな彼は意外と偏食家だった。 「また魚残してる。テッド、好き嫌いは良く無いよ、きちんと食べないと大きく成れないよ」 ほらこんなに軽い、そう言って椅子に座っていたテッドを後ろから抱え上げる。 僕よりも年下(に僕には見える)の彼は軽々と持ち上げる事が出来、彼にも回りにも如何に此の少年が軽いのかを知らしめる事になる。 テッドの身長は僕と大して変わらなく見えるのに、体重は酷く軽かった。正直、持ち上げた僕が一番驚いている。 「___っ!!何すんだよ、離せっ馬鹿!!」 抱えているテッドが離せとじたばたと暴れる。だけど、魔法と弓矢が中心の彼は僕に比べたら非力で、自力で僕の腕を解くのは無理だった。 …なんか可愛いな。こういうテッド。 此の船にやって来てからテッドは余り人と関わらないようにか、ずっと一人で居た。時々アルドが構おうと追いかけ回しているのを見かけたけど、テッドが自分から関わろうとはしていなかった。 そんなテッドは見かけよりも何処か大人びて見えて、なんだか近寄り難い雰囲気だった。 それが今はもの凄く(見かけの)年相応な態度をしている。 じたばたと暴れる彼の頬は怒りの為か紅潮しているし、しかめられた眉に潤んだ瞳。本当に子供が怒っているようにしか見えない。 「……テッド」 「なんだよ、馬鹿!」 「可愛いっ!!」 威嚇する様な返事を無視し、僕はそう叫ぶとテッドを抱き締めた。 ぎゅうっと音がしそうな程抱き締めて、目の前のテッドの髪に顔を埋める。 お日様と、僅かに甘い匂いがした。子供の匂いだ。 もう、僕は矢も盾もたまらず、咄嗟にテッドを肩に担ぎ直すと食堂から飛び出した。 「ちょっ、おい!!ラズロ、何処に行く気だ、降ろせ!!」 「もちろん、僕の部屋に決まってるじゃないか!」 嬉々として僕はテッドの問に答えた。もちろん、足を動かすのを止めはしない。 馬鹿だお前は!!そう叫ぶテッドの声がどんどん小さくなって行くのを、食堂で彼等のやり取りを見せつけられていた者たちは呆然と見送ったのだった。 自称死神の少年がいても、此の船は今日も平和だった。 “どうしようも無い僕の所に、小さな死神がやって来た”〜お魚編〜 |