風呂上がり、鏡の前で俺は小さく溜め息を吐いた。 鏡に映った自分から視線をずらし、直接自分の身体を見れば、其処には二次成長すら始まっていないちんくしゃな餓鬼が一人。 胸から腰を覆う様に巻いたタオルの上から、そっと胸に両手で触れてみた。 「………」 少しは有ると言えるのだろうか、此の胸は。 ほんの僅かお情けの様に緩やかに膨らんだ其れは、少年と言うには可笑しくて、だけど女と言うには未熟すぎる物だった。 「こんなんだったら、一層、全く無ければ良かったのに…」 呟いた己の声は何処か泣きそうで、其の事に気付きテッドはどうしようもない焦燥に駆られる。 自分がもっと男女の差が無い程子供だったら、ティルを好きになんてならなかったかもしれないのに…。 もっと女として成熟していたら、最初からティルと友人という枠では無く、恋人と言う関係になれたかもしれないのに…。 考えてもどうしようもない事ばかりが頭を駆け巡り、それらを打ち消す様にテッドは頭を振った。 しかし、ティルへの恋慕の情は消えず、テッドはどうする事も出来ずにその場に蹲り膝に顔を埋めて呟いた。 「馬鹿じゃねぇの、俺……」 300年もの間、女と言う事実を忘れて生きて来たくせに、今更だ。 どうせティルの下だって何時かは離れなければいけないのだ、結ばれる事なんて絶対に無い。否、此の紋章がある限り、其れは絶対に有ってはいけない事だ。 それなのに、そうと分っているくせにティルへの想いが募る。そんな自分に嫌気がさす。 ティルの隣にいる自分を想い描く事を止めない自分など消えてしまえ。 消えろ!消えろ!! 「消えてくれよ!!」 ティルの傍にいられなくなる“女”の俺なんて消えてくれ。 俺は、一分一秒でも良い、出来るだけ長く、 「ティルの傍に居たいんだ…」 だけど、そう思っている自分が一番“女”だって事も俺は気付いているんだ……。 八方塞がりで、もう、どうすれば良いのか見当もつかない。 「誰か助けて」 「誰か」なんて言いながら、自分の脳裏に映ったのはやっぱりティルだけで、自分の余りの馬鹿さに涙が出た。 “涙のバスルーム・ガール” |