「好きだよ」
 自分と似ている、だけどずっと優しい響きの声にそう言われて、俺は自分の顔が赤くなるのを自覚した。
 目の前で銀の髪がキラキラと日の光を反射して、俺には真似できない微笑みを縁取っている。
「おっ、俺も…俺も王子さんの事が!!」
 ずっと思っていた想いを口にしようとすると、王子さんが俺の肩に手を置いて覗き込んできた。
 夏の空よりも蒼い瞳にじっと見詰められて、俺は言葉が出て来なくなる。
 こんな風に近づいた事なんて無くて、初めて見る王子さんの顔に見惚れてしまう。
 あ、王子さんって意外に睫毛長いんだな。
「ロイ…」
 其の声に飛んでいた意識を呼び戻されると、目の前に王子さんの顔があった。
 段々と近づいて来る王子さんに俺は期待に胸を震わせる。
「王子さん…」
 俺はそう言うと目を閉じて、王子さんの唇を待ちわびる。
 ドキドキと心臓が高鳴って、王子さんに聞こえるんじゃないかって心配になった。
 目を閉じていても王子さんの顔が近づいて来るのが解る。
 あと、もう少し___!!


「____あれ?」
 いきなり視線の先に見慣れた天井があって、俺は一瞬何がなんだか解らなかった。
……あー、なる程。夢かよ!!
 なんだよ、夢だったら後一寸くらい見させてくれよ。
 なんでこれからってところで起きちまうかなぁ、俺も。
 あんな事現実じゃ起こる訳無いんだから、夢でくらい良い目見たって良いじゃないか。
 王子さんが俺に告白するだなんて有り得ない。
 …俺が王子さんに告白するってのなら有り得るかもしんねーけどさ。
ま、そんな事一生無理な気がするけどな。
 俺はそんなに楽観主義者じゃないから、そんな事怖くて出来ないっての…。
 振られちまったら、それからどう接していいかわかんねぇよ。

『必要なのは、あとちょっとの勇気』