「王子さん」
 僕とは違う凛とした声に呼ばれて、僕は其の方向へと振り向く。
そうすると、予想した通り亜麻色の髪を靡かせた金の瞳の彼が其処に立っていた。
「やあ、ロイ。どうしたんだい?そんな所で」
 僕がそう声を掛けると、ロイは視線を逸らして「別に」と素っ気なく呟いた。
 僕は其れがロイの照れ隠しだって知ってる。ロイは自分で気付いてないかもしれないけど、恥ずかしかったりするとこうするんだ。
 そんな事を思っていたら、何時の間にかロイが僕の目の前にまで来ていた。
 わ、ロイって睫毛長いんだ。
「王子さん。俺、アンタの事が好きだ!」
 突然、ぎゅっと目を閉じたかと思うと、ロイはそう叫んだ。眉間に皺がよっていたのは、多分僕の見間違いじゃないと思う。
 あまりにロイらしい告白に僕は一瞬呆気にとられたけど、ロイの頬が薄紅色に染まっているのに気付いてロイが本当に僕の事が好きなんだって解った。
 冗談とかじゃなくて、本当にロイが僕の事を好きなんだ。
 まるで夢みたいだ!僕が好きなロイが、僕の事を好きだなんて!!
「本当に?ロイ。僕、嬉しいよ…ねぇ、キスしても良い?」
「……ん」
 ロイの手を取って尋ねれば、ロイは更に頬を赤くして小さく頷いた。
あぁ、やっぱりロイは可愛い。
 僕が顔を近づけていくと、ロイは恥ずかしいのか目を瞑ってしまった。彼の金の眼を見れないのは少し残念だったけど、取り敢えずは良しとしよう。
 今はロイとキスするのが先決だ。
「ロイ…」
 段々と僕とロイの距離が縮まっていく。
 あと、少しで____!!


「_____あれ?」
 突然僕の目の前には枕があって、ロイの姿は消えていた。
 え?!あれ?もしかしてさっき迄のって夢?
 ……ちぇー、だったらもっと速攻でキスしとけば良かった。
こんな夢みたいな事、本当にあったら良いのに。それとも、さっきの夢って僕にとっとと告白しろって言ってるのかな。
 それは、ちょっと難しいな。
 そう思って僕は枕に八つ当たりで拳を叩き込んだ。

『必要なのは、あとちょっとの勇気?
いいえ、実は必要なのはほんの少しの切っ掛けなんです』