目の前でゆっくりと『標的』が倒れていくのを、僕は静かに見詰めていた。 倒れた『標的』から流れた血が足下の絨毯を汚していくのを、何の感慨も無く眺めた後、僕は目の前の『標的』が確実に死んでいる事を確認するとその場を後にした。 何時だって『仕事』は簡単だ。 僕は其の為の教育を受けて来たのだから。 『標的』に対して何を思う事も無いし、死体を見て動揺する事も無い。 …何物も僕の心を揺らす事は無い。 そう思っていた。 でも、今目の前に倒れている死体に、僕は言い表せない思いになっている。 此れが動揺している、と言う感情なのかもしれない。 綺麗な金色の髪は血で汚れていて、肌は蒼白く、唇は紫になっている。 あぁ、貴方は自分の信念を貫いて逝ったのですね。 貴方はきっと満足しているのでしょうけど…… 「…ギゼル様……」 僕は此れからどうしたらいいのかすら分りません。 ”絶望を知った人形” |