ギゼル様の指が、生きている温度を感じさせない僕の肌をなぞる。
それだけで、僕の身体は無くしていた熱を通り戻したかの様に熱くなる。
普段は全く変化のない表情にもほんの少しではあるが変化が訪れて、其の事が僕は酷く嬉しい。
こんな些細な変化、きっと貴方は気付いていないでしょうが、それでも良いんです。僕は、貴方によって変わっていく自分が居る、それだけで満足なのですから。
たとえ貴方が性欲処理の為だけに僕を抱いているのだとしても、貴方が僕に触れてくれている、その事実だけで僕は無くしていた感情を取り戻す程に嬉しいのです。
貴方と重なり合う此の一瞬が、人形が愚かな人間に戻る瞬間。
人形が感情なんて取り戻すから、僕は酷く狂おしい想いに苛まれる。だけど、其の痛みすら貴方を想っての物だと思えば愛おしいのです。
此の苦しみが永遠になれば良いのに…。
だって、其れは永遠に貴方とこうして居られるという事だから。此の瞬間だけは僕は貴方を直ぐ傍に感じられるから…。
此の今感じている貴方の熱が、此の狂おしい感情が……幻想でも良い、永遠になる様に。


“世界よ、今直ぐ終ってしまえ”