今日もリオンを怒らせた俺は、一人湖を眺めていた。
 別に、俺はリオンの事を恋人として好きなんじゃない。
 駄目だった俺を叱ってくれた人だから、何処か姉みたいに思っている。…もしかしたら、見た事も無い母親を重ねているのかもしれない。
 だから、構って欲しくてつい悪戯してしまうんだ。
 それに、リオンを好きじゃないって言える理由が俺にはある。
 俺は王子さんが好きなんだ。
 もっとも、王子さんは俺の気持ち何て気付いてないけど。
 一緒に居たくて、王子さんには結構ちょっかい出してるのに。
 …王子さんは俺の事どう思ってんのかな。
「ロイー!」
「!!」
 突然背後から呼ばれて俺は驚いた。呼んでいる相手が、丁度考えていた奴だったから余計に。
「…王子さん、一体こんな所に何の様だ?」
 俺は隣に来て微笑む王子さんに、呆れた様に声を掛ける。
 王子さんは何が面白いのかニコニコと微笑みながら口を開いた。
「ロイ、またリオンを怒らせたでしょ。駄目だよ、好きな子にちょっかい出したい気持ちは分るけど、あんまり怒らせると嫌われちゃうよ?」
「……」
 ほら、また此れだ。
 王子さんは俺がリオンを怒らせる度こんな風に言って来る。
 まぁ、俺がリオンの事を好きだって思っているからしょうがないんだけど…。
 でも、何でこんな鈍い奴にそんな事言われないと行けないんだか。
 俺がアンタの事好きだって事、アンタ全然気付いてないんだろう?
 鈍い男も嫌われるって言ってやりたかったけど、俺は其の言葉を呑込んだ。
「…もう、恋なんて二度としねぇ」
 呑込んだ代わりにそんな言葉が俺の口から出て来た。
「…そうだね」
 王子さん、アンタ本当に鈍いな。
 何で「そうだね」なんて言うかな、ホント嫌んなるぜ。
 なんで俺、こんな奴の事好きなんだろう。
 色々言ってやりたかったけど、多過ぎて言葉にならなくて、其れ等は溜め息になって口から出て行ってしまった。


 ”ニブい人”