ロイの事を好きになったのは彼が僕の変装を止めて、彼自身を初めて見たときだった。
 所謂一目惚れって奴だと思うけど、僕はどうにも性格がねじ曲がっているらしくて、彼に冷たく接してしまった。
 素っ気ない態度だと周りの人にバレるかと思って、回りくどいけど作り笑顔だけ向けてやれば、彼は一瞬泣きそうな顔をして僕を見た。
 其の時に分ったんだ、ロイも僕の事が好きなんだって。
 お互いに一目惚れだなんて、何処か運命みたいだと思った。
 それから僕は、ロイに対して態と壁を作って接する様にした。
 そうするとロイは酷く傷ついた顔を必至で隠して僕に接するんだ。
 ロイが時々遠くからじっと僕を見詰めるているのに気付いても、僕はロイの方を見たりはしなかった。
 僕がロイに冷たく接していれば、ロイはどうやったら僕が自分を見てくれるかだけを考えるでしょ?
 ねぇ、ロイ。僕の事だけを考えて、僕の事だけを想って。
 僕に嫌われているんだと、その胸を不安で震わせてよ。
 そして、僕に「嫌わないで」って縋り付いてよ。
 そうしたら僕は君の涙を拭って、優しく囁いてあげるから。
 「僕も君の事が好きだよ」って。
 其れはとても甘美な想像だった。

「あ、ぁ…なんで、なんでロイが…っ!!」
 僕は自分の身体を支える力さえなくして、膝を付き沢山の矢に刺されるロイを見詰めた。
 そう、唯見詰める事しか出来なかった。
 僕は馬鹿だ。ロイがこういう事に出るかもしれないと、何故気付かなかった。
 僕に好かれたいと切に願っているロイが、こんな風に無茶をしないと何故思っていたのだろう。
 ロイは自分の命を捨てても良いと思うくらい僕の事を想っていてくれたのに…。
 頭が真白な僕の見詰める中、ロイはゆっくりと倒れていった。

 そっと寝台に横たわるロイの頬に触れて見る。
 冷たい。
 僕は今起こっている事全てが夢なら良いのにと思った。
「……ごめん…なさ、い……ッ!」
 何に対する謝罪なのか自分でも分らなかった。でも、無意識に口から溢れていた。
 ロイ、僕は君に碌に触れた事も無かったんだ……。
 僕は君に「好き」だなんて言えない。
 言う資格が無い。
 言えない侭の僕の想いは、一体何処に行くんだろう。
「……ロイ…」
 好きだよ。
 結局、其れは音にすらなれずに終った。


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