『空の色は限りなく黒に近い紫。
 ぽつんと浮かび上がるオレンジの月。
 しかもその形がチェシャ猫の口だなんて、あまりにも”らしく”て笑ってしまう。
 さぁ、宴をはじめよう。
 怪物だらけの”真夜中の宴”を』


…てな感じで怪物パラレルを一つ。
話としては狼男のロイが、双子のゴーストのフェイロン、フェイレンと一緒に旅をしている最中。
吸血鬼の王子さん一行と出会うってだけの話。
きちんと話にすると長くなりそうなんで、妄想だけで放り出します。
かなりビビっと来たネタなんでちょびちょび小話をUPしていく予定。







「ねぇ、ロイ」
 ぽかぽかと気持ちのいい日差しに俺が微睡んでいると、突然隣に居る王子さんから声がかけられた。
「…なんだよ、王子さん」
 気を抜くと閉じてしまいそうな目蓋を持ち上げて、俺は王子さんの声に答える。
 下らない理由だったら殴ってやりたい。
「あのさぁ」
 王子さん、俺は今眠いんだよ。用があるなら早く言ってくれ。
 イライラしながら俺は王子さんが続きを言いやすい様促す。
「…だからなんだってんだよ」
 もう、早く言ってくれ。
 くだらない事だろうと、なんだろうと、言って貰わないとどうしようも無い。
「血、吸っても良い?」
「はぁ?!」
 寝始めてた俺を起こして其れかよ。
 ふざけんな。
「嫌に決まってんだろ」
 なに言ってんだか、俺がそう付け足せば、王子さんは少し何か考え込んでこう言った。
「じゃあ、咬むだけ」
「却下」
 何が咬むだけ、だ。絶対それだけで済む筈が無い。
 前科者の言う事なんて誰が信じるか。
「ロイのケチ」
「ケチで結構だっての」
 そう言うと王子さんはむすっとして、俺を恨めし気に睨んで来る。
 …そんなガキみたいな表情じゃ、怖くなんてねえっての。
 何時迄もそんな顔してんなよ、アンタ王子だろ。
 不貞腐れている王子さんに俺はそっと手を差し出す。
「とりあえず、手ぇ繋ぐぐらいで我慢しとけって」
「うんっ!!」
 そう言うと、王子さんは顔を輝かせて喜んだ。
 そして、もの凄い速さで俺の手を掴むと、其の侭弄り始める。
 もの凄ぇ現金な奴。
「…爪には気を付けろよ」
 アンタに怪我させるとリオンが五月蝿いから、そう思って軽く注意をする。
 だけど、王子さんは俺の話を聞いてるのか判らない程、俺の手を触るのに熱中している。
 …何が愉しいんだか。
 俺は溜め息をついて、自由になっている方の手で王子さんの銀髪を弄り始めた。


 ”微睡む昼下がり”