01.失うくらいなら 「ねぇ、ロイ」 僕は隣でぼんやりと湖を眺めているロイに声を掛けた。 「んー」 ロイは何処か上の空で僕に答える。 僕はそんなロイの髪を一房手に取ると、その亜麻色の髪に口付けた。 僕とは違って真っ直ぐなロイの髪、唇でその質感を感じながら僕はうっとりと酔いしれる。 「僕はね、ロイ。ロイが一番大事なんだ」 そして、ロイの髪を口元に持っていった侭僕は呟いた。 「はぁ、そりゃありがたい言葉だな」 その言葉に湖を見ていたロイは、やっと僕の方を見てくれた。 ロイの声は呆れたという感情を隠す事なく含んでいたけど、僕は気にせずにロイに語りかける。 「ロイに会う前は、確かにリムも国も民も皆、大事に思っていた」 だけど、そう続けて僕はロイの眼を覗き込んだ。 金の瞳は今や僕に釘付けだった。 突然こんな事を言い出した僕をいぶかしんでいるのかもしれない。 「だけど、もし今ロイを喪う様な事になったら」 きっと、僕はこんな世界全部壊してしまうよ。そう言って僕はロイへと口付けた。 「ん……随分と過激な告白だな、王子さん」 触れ合っていた唇を離すと、ロイはそう言いながら僕に笑いかけてくれた。 「うん、僕はロイの事を愛してるよ」 僕もロイへとにっこり笑うと、その手を取って唇を落とす。 あぁ、君への想いが大き過ぎて、こんな言葉なんかじゃ伝えきれないよ。 唯、君への想いを表すなら… 「ロイ、君を失うぐらいなら、僕は世界なんて要らないんだ」 きっとこの一言に尽きるのだろう。 ロイに出会った瞬間、僕の世界はロイ一色になったんだ。 だから僕から離れていったりしないで、その想いを込めて僕はロイの手を握り締める。 「…俺だって、王子さんの事が好きだぜ」 ロイは僕の頭を撫でながらそう言ってくれた。 その言葉に、僕は泣き出したいくらいに嬉しくなった。 君を護る為、君とずっと一緒に居られる様に、その為に僕は此の戦争を終わらせよう。 だから、ずっと僕の傍に居てね、ロイ。 終 |