03.残像

 眼をつぶっても消えない。
 何て忌々しいんだろう。
 アンタはもう俺の前に居ないのに、何時迄もアンタへの想いが胸に残っている。
 まるで残像の様に、勝手に始まって勝手に終った恋が俺の胸を苛む…。
 なんて滑稽なんだか、俺はこんなに女々しかっただろうか。
 王子さんの傍で、女王騎士として生きていく選択だって出来た。
 でも、それをしなかったのは俺自身なんだ。
 王子さんが誰かを好きなって、そいつと幸せそうにしてる所を見るなんて、絶対平静を保っていられない。
 だけど、今オレの傍にアンタが居ないのがどうしても耐えられないんだ。
 なんでこんな勝手な想いが溢れてくるんだろう。
 なぁ、王子さん。アンタに会いたいんだ。
 アンタの傍に居たい、ほんの少しの時間で良いんだ。
「王子さん……会いてぇよぉ……っ…」
 そんな馬鹿な願い、叶う訳無いって事ぐらい分ってる。
 だから、こんな想いはさっさと消えてくれ。
 残像すら残さず、此の頬を伝う雫と一緒に消えてしまえ。