※時期的には女王騎士ED後、ロイの旅立ち前に王子さんがロイを監禁って設定です。


06.犯した罪さえも

 目の前の金の瞳から透明な雫が溢れていくのを、僕は黙って見詰めていた。
 此の部屋に連れてきた当初も、そうやって君は泣いていたね。
「…もぅ…此処から、出して……っ…」
 そんな風に泣いたって、僕は君を此処から出したりしないよ、ロイ。
 寧ろ、君がそうやって泣く程、僕は君へ思いの強さを自覚するんだ。
 此の感情は馬鹿みたいに大きくて独りよがりで、大事にしたいと思っている君にすら凶暴な衝動を抑えられなくなる。
 僕は何処か狂っているんだろう。
 だから君にこんな酷い事ができるんだ。
「なぁ、王子さん…頼むからっ…此処、から……」
 出してくれ、最後の呟きは嗚咽に掻き消されてしまって。
 ロイは僕に縋り付きながら、其の侭泣き崩れた。
「…ロイ」
 僕が声を掛けるとロイの身体は可哀想な程竦み上がって、そんなロイの様子を僕は痛ましいと思い優しくしてあげたくなる。
 でも、同時に酷い愉悦を覚えるんだ。
 此の愉悦が僕にロイへと非道な事をさせる原因だった。
 …あぁ、ロイ、君をもっと啼かせたい。
「僕は前にも言ったよね、もう王子じゃないって」
 ロイの頬を両手で挟んで、其の侭上向かせて顔を覗き込めば、ロイは青ざめながら必死に口を開く。
「ぁ…ご、ごめん…っ……ごめんなさい、ファルーシュ…!!」
 小さく震えながら、僕の腕の中で必死になって許しを請うロイ。
 頬は涙に濡れて、目尻は泣いた事により赤くなっている。
 僕はその赤くなった目尻に優しくキスを落とすと、殊更優しく囁いてあげる。
「じゃあさ、ロイからキスしてよ」
 恥ずかしさから頬を紅潮させながらも、ロイはおずおずと僕に自分の唇を押し当ててきた。
 其の唇の温度を感じて、僕は今なら胸を張って言えそうだと思った。
 犯した罪さえ誇りに思う、と。

 ロイ、僕は後悔なんてしてないんだ。