11.籠の中のキミ 強引に君を手に入れるのなんて簡単だ。 でも、それじゃあ君の心は手に入らない。 僕は君の心も身体も全て欲しいんだ。 そう、例えるなら綺麗な小鳥は欲しいけど、其の風切羽根を切ってしまう事で其の美しさを損ねるのは嫌。そんな感じの気持ちだ。 完璧な侭の小鳥が僕は欲しい。 ならどうすれば良いのか、そんなのは簡単だ。 小鳥に自分が鳥籠に居ると気付かせなければ良い。 気付かれない様に自分から鳥籠に入ってく様に仕向ければ良いんだ。 直ぐ先の未来を思って僕はうっとりと笑った。 「ねぇ、ロイは僕の事嫌い?」 其の琥珀の瞳を見詰めてそう問えば、ロイは少しの驚きと困惑を其の瞳に浮かべた。 ロイが僕の事を憎からず思っていてくれるのを、僕は知っている。 だから、今こうやって僕は息がかかる程近くで見詰めて、甘い愛の言葉でロイを追詰めていく。 ロイには見えない鳥籠の入り口へと……。 強引に奪うのが嫌なら、自分から委ねて貰えば良い。 ロイの全てを、僕に委ねて。 「ぁ…俺……」 ロイの両手を握って更に顔を近づけると、ロイは頬を赤く染めて俯いた。 其れは明らかな僕への好意で、僕は小さく笑う。 もう、小鳥は鳥籠の目前に迄来ていたのだ。 後は優しい言葉で鳥籠の中から呼んでやれば、小鳥は自ら鳥籠の中へと入って来る。 「僕はロイの事が好きだよ。勿論、友達としてじゃない、恋人として好きなんだ。…ロイ、僕は君の事を愛してるんだ……!!」 握っていた手にぎゅっと力を込めて僕はロイにそう言った。 僕の言葉にロイは恐る恐る顔を上げる。 僕はそんなロイに微笑んで、握っているロイの手に口付けた。 「王子さん…今の言葉、嘘じゃないのか?本当に俺の事が好きなのか?」 嘘だったら、こんな酷い嫌がらせは止めてくれ。ロイはそう呟いてそっと目を伏せた。 栗色の睫毛が琥珀の瞳に影を落とす。 其の琥珀が潤んでいる様に見えるのは、きっと僕の自惚れじゃない。 「嘘なんかじゃない!僕はロイを愛しているんだ。…ロイ、この想いを受け入れてくれなくても構わない。だけど、否定だけはしないで……」 最後は優しく言い聞かせる様にロイへと語り、僕は潤んだその目尻へと口付けて滲んだ滴を吸い取った。 そして、其の侭ロイの顔へと優しく啄む様な口付けを降らせる。 好きだよ、この気持ちに嘘はない。 だから… 早く僕に全てを委ねて、ロイ。 僕は君の全てが欲しい……!!! どれ程経ったのか分らないが、暫くしてロイが僕へと視線を向けた。 琥珀の瞳でじっと僕を見詰めるロイ。その顔は耳迄赤く染まり、酷く愛おしい。 「愛してる…」 琥珀を見詰めて、僕は愛を語る。 そんな僕にロイは少し戸惑いながら桜色の唇を開いた。 「俺も…俺も王子さんが好き、だ…」 「っ!本当に?!ロイ、君こそ嘘じゃあないよね?」 ロイがそんな嘘をつく筈がないと分っていて、僕はロイに問い掛ける。 ああ!漸く小鳥が僕の鳥籠に入ってくれた。 「嘘じゃねぇよ、俺だって王子さ…ファルーシュの事が好きなんだ」 握り締めているロイの手は小さく震えていて、ロイがこの告白にどれ程の勇気を振り絞ったのかを僕に伝えていた。 「嬉しいよ、ロイ」 そう囁いて僕はロイを抱き締める。 突然の事にロイは一瞬身体を硬くしたけど、直ぐに僕の背に腕を回してくれた。 可愛い小鳥、もう逃がさない。 大丈夫、鳥籠にいるなんて絶対に気付かせないから。 大事に、うんと大事にしてあげる。 …そう、傷付ける時でさえ、真綿で首を絞める様に優しく傷付けてあげるよ。 だから安心して僕の物になって良いよ、ロイ。 心配する事なんて何もないからね…。 あまりの予定調和に僕は思わず声を殺して笑った。 終 |