「吹雪…」

ぼんやりとしていた所に声をかけられて、その声に顔を上げると、目の前には自分を呼んだ男の顔があった。

「亮。どうしたのさ、こんな風にふざけるなんて君らしく……っ」

何時も真面目で、冷静な亮らしくない行動の意味を訪ねると、その言葉を遮る様に僕の唇は塞がれた。
乾燥した、でも荒れている訳じゃない亮の唇の感触が僕の唇から伝わって来る。
催促する様に僕の唇を舐めるその舌に僕は小さく苦笑して、薄く唇を開く。すると、その隙間から亮の舌が入り込んで、僕の舌を絡めとる。

「…ん……ふ、ぁ……」

遭わせた唇の隙間から、途切れ途切れの僕の声が洩れる。
それだけじゃない、舌を絡める時に立つ、酷く卑猥な水音も僕の耳に届く程度には聞こえた。
突然のキスに翻弄されて、無我夢中で亮の頭を縋る様に抱える僕の耳に、遠くの方で楽しそうに談笑する学生の声が聞こえた。



01  遠くで聞こえる笑い声