彼は、何時だって笑っていた。
それは僕の様な笑い方とはまた違った、常に彼の顔に浮かんでいるものだった。
彼は、優介は、何時だって薄らとその顔に笑顔を浮かべて僕たちを見ていた。

 「ごめんね、吹雪…」

だから、僕は気付けなかった。

 「でも、君が悪いんだよ」

彼が、どんな想いで僕たちを、否、僕を見ていたのかを。

 「言うつもりなんて無かったんだ。だけど、君が…」

彼が、どんな想いでこの行動に出たのかを。
どんな葛藤の末に壊れてしまったのかを。
僕は彼がこうして壊れてしまう迄、気付く事が出来なかったんだ。

 「君があんまり亮とばかり楽しそうに笑うから…っ!!」

押し倒されて押さえつけられた手首が痛かった。
でも、それ以上に僕を見下ろしながら、自分が泣いている事に気付かない優介の方が、僕の胸を痛くさせた。
ごめんね、気付いてあげられなくて。
ごめんね、優介。
それでも僕は君を親友以上に思えないんだ。
微笑を浮かべながら涙を零す優介を、僕は綺麗だと思った。そして、彼にそんな(かお)をさせているのが僕なんだと思うと、僕の胸は更に痛んだ。
だけど、それでも僕は彼を恋人として見る事は出来なかった。



03  その笑顔の裏側