『切ない恋で5題』

配布元:メシア

01:大好きだから、切なくて (覇王×十代)
02:苦しいくらい、大切で(覇王×十代)
03:この腕に抱きしめられるものならば(ユベル→子供十代)

04:この想いをなんと言おうか?(藤→吹)
05:好きで好きで、愛しくて(亮→吹)/























































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 苦しい、

自分を責め続ける仲間が辛くて、それから逃げて覇王に護られて。
俺を優しく護ってくれる覇王が嬉しくて、大好きになった。

 だから、切ない。

俺は好きな覇王に、俺が辛くて逃げた物を全て押し付けているんだ。
その事実に気が付いた瞬間。

 もう、笑いしかでなかった。

でも、俺がこうして逃げていなかったら覇王は存在していなくて。
俺はこの現状を変えるべきなのか、この侭にするべきなのか分からない。

 だけど、

此処には覇王がいる。
あまり言葉にしてくれないけど、俺の事を常に気にかけてくれている覇王。

 俺が悩み続けている間は、

優しい覇王、そんな覇王に俺は辛い全てを押し付けているんだ。
好きなのに、こんなに大好きなのに、俺は覇王に辛い思いをさせる事しかできない。

 覇王は俺の傍に居てくれるよな?


01 大好きだから、切なくて(覇王×十代)



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 護らなければ、

自分よりも繊細で、傷つき易い俺の半身。
世界から糾弾され、俺の下に追い立てられる様にして逃げ込んできたその柔らかな心。

 俺が。

優しい十代。
世界がお前を必要としなくても、俺は、俺だけはお前を見捨てたりしない。

 だが、

優しすぎる十代。
俺は何も感じないと言うのに、お前は俺の心配ばかりしている。

 いつか十代は俺を必要としなくなるだろう。

俺の心配など、する必要は無いと言うのに。
俺はお前を苦しめる全てから、お前を護るために存在しているのだから。

 それでも、

暗い心の闇の中、佇むお前を抱きしめる俺を、お前はどう思っているのだろうか。
俺の心情など、気付いていないのか。それとも、只関心が無いだけなのか。

 お前が必要としなくなる迄、

何も答えてくれなくとも構わない。答えが欲しい訳ではない。
唯、俺がお前の事を大切だと、愛おしく思っている事だけは知っておいてくれ。

 俺は十代を護り続けるだけだ。



02 苦しいくらい、大切で(覇王×十代)






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 今度こそ、

再び出会えた、己の小さな主。
以前よりも幼い姿になってはいたが、直ぐに彼だと己には理解できた。
以前よりも小さな手、低い背丈、声変わりもすんでいない可愛らしい声。

 彼を護ってみせる。

なかなか帰って来ない両親を思って、夜に夢うつつに泣いている子供。
君には僕がいると、そう言って抱きしめたくても今の僕には現実に作用できる肉体が無かった。

 あぁ、なんと言う事なのだろう。

声をかけ慰める事はできても、今の僕では彼の頭を撫でてやる事すらできないのだ。
それなのに、彼を抱きしめてやれる肉体を持つ物たちは、彼を悲しませるばかりだった。

 何故、誰も彼を抱きしめてやらないのだ。

どうしてこの子が悲しんでいるのに、必死で隠している涙に気が付かない。
何故お前たちはできる事をしない。
僕がやりたくても、どうしたってできない事ができるくせに。

 ならば、僕はどれだけ時間がかかろうが、

琥珀の瞳を潤し、溢れる雫を拭ってやりたい。
涙が伝った頬に優しく口づけてやりたい。

 必ず彼をこの腕で抱きしめてみせる。



03 この腕に抱きしめられるものならば(ユベル→子供十代)


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 護りたかった。

学園に入学して今日迄ずっと一緒だった彼。
珈琲色の長髪に、焦茶の瞳。耳に心地好い声で彼は何時だって突拍子の無い事ばかり言って僕や周りを驚かせていた。

 だけど、同時に僕は、

ダークネスの研究の末、僕はそれを喚び出す方法を発見した。
究極の力、僕はずっとそれに興味を惹かれ続けていた。
それはいったいどのような物なのか。それを手にした時、人と言う小さな器はいったいどうなってしまうのだろう。
それらを考えると、興味が尽きる事は無かった。

 同じくらいの強さで彼を、

それを実行している最中、僕は彼に見つかってしまった。
その段階では未だ、止めようと思えば止める事だって出来たのだ。だけど、僕はそれをせず、ダークネスを喚び出した。
その結果、僕は人としての体を失った。そして、その場に来てくれた彼を巻き込んだ。
危険だと分かっていて、僕はダークネスの力を彼に押し付けたのだ。

 僕と同じ所まで堕としたかったんだ。



04 この想いをなんと言おうか?(藤→吹)


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 こんな思いは初めてで、

自分の少し先を鼻歌を歌いながら歩いている男の背を見詰めた。
長く伸ばされた珈琲色の髪が、制服の白に良く栄えている。

 自分が自分ではない様に、

こんな風に二人きりになる機会など滅多にないと言うのに、自分はこうして気の効いた事一つ言えずに黙ってこの男の後ろを歩いている。
簡単な事だ、「吹雪」そう一声懸けるだけで目の前を行くこの男はこちらに振り返るのだ。

 どうしたら良いのかが分からないのだ。

それなのに、自分は声をかける事すら出来ていない。
前を歩く男の名前を呼ぶ、唯それだけの行為を『皇帝(カイザー)』などと呼ばれているこの自分ができないとは。
口を開いても、言葉が喉に支えて出てこない。
早く声をかけなければ、もうすぐ藤原の所に着いてしまう。

 早く、

そうすれば、もう吹雪は自分だけを見てはくれなくなる。
自分と藤原、その両方に同じ様に視線を注ぐのだろう。

 早く、声をかけなければ。

それはこの男の優しさなのだろうが、それを面白くないと感じる自分がいる。
自分だけを見て欲しい、そう思うのだ。

 そう思うのだが、

なぁ、吹雪。俺だけを見てくれ、そう言ったらお前はどんな顔をするのだろうな。
驚いた顔をする吹雪を想像し、俺は小さく喉を鳴らして笑った。
小さく笑った俺に気付く事無く、吹雪は俺の前を歩き続けている。

 結局、声は言葉にならなかった。



05 好きで好きで、愛しくて(藤→吹)


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見てるだけでとても温かい気持ちになれるんだ。
心臓がドキドキするとかよりも、なんていうか、心の芯の方?から暖まる様な、多分、そんな感じ。
デュエルするのは凄く楽しくて、わくわくドキドキするのは変わらなかったけれど、なんていうか、その度に物凄い満足というか、そういうのがあって。
勿論デュエルできなくても、少し話せればそれだけで一日凄く気分が良くて。
一緒に居たいとか、そういうのとも多分違くて、でも居れたらきっと嬉しくて。
優しい気持ちになれるっていうか、穏やか?に過ごせるっていうか。
なんだろうな、此の気持ち。すごく、すごく……こういうの、幸せって言うのかな。
もし、此の気持ちが恋なら、俺、カイザーの事が

6.好きかもしれない(亮←十)


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