ただ全てが変わっていってしまうことが悲しかった。自分も、自分を取り巻く環境も、友達も、両親も、全てが変わっていってしまうことがどうしようもなく寂しかった。
 変わらなければいいのに。なにもかも、ずっとこのままでいればいいのに。
 子供のままでいたかった。子供のままでありたかった。ずっと子供でいたかった。
 足し算だってろくに出来なくったって、高いところのドアノブをつかむのが大変だったって、ものを沢山食べられなくったって、それだって構わなかった。
 明日を夢見て、目の前に一所懸命で、ただそこだけを見ていることを許されて、誰を好きになることだって構わなかった。
 みんな、みんな平等な世界だった。
 男も女も関係なかったし、ただ愛されることを当たり前に受諾して、笑い合って、ふざけて、時々泣いたりして、そうやって生きていることを許されていた。

「あの頃に戻れたらいいのに」

 組み敷いたままの君がぽつりと漏らした。
 それは久々に聞いた、偽らざる君の本音だったように思えた。



(なんででも読める気がする……)