綿毛

 少し前までは黄色い花が咲いていた野原は、今や一面の白い綿毛に彩られている。
 ある種、それは圧巻だった。
 ロイは一つ一つ、小さい綿毛の茎を手折っていく。十本も集め束ねれば、それはある程度の白い固まりとなる。
 もう少し集めてから、ロイは王子のいる方へ駆けていった。彼の背後でロイが手を振りあげたところで、ぽつりと王子は彼を呼んだ。
「ロイ」
 それにロイが答える前に、王子は穏やかな声音で続ける。
「それ振り回したら、カズラー当てるよ」
 カズラーって、あのでっかい植物のカズラーだよな
 アレを当てるってなんだ、王子さんがアレをぶん投げるって事か?
 いや、あれ3メートル近くあるだろってか無理だろ
 いや待て、王子さんならきっとやるぜってーやる
 ってか俺完全死角に立ってしかも気配消してるんだけど
「すいませんでした」
 どこから突っ込めばいいか分からなかったけれど、クオーズならば絶対にやると直感したロイは素直に謝った。

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初お披露目、クオーズさん
普段の彼はこんな人。
間違ってもCPにはならない二人。








執務室

 アノイは顔を両手で覆いたくなった。しかしその衝動をぐっと堪え、飽くまでも自分の仕事を続けようと勤めた。
 だが無視しようとすればするほど、後ろで喚く声が耳につく。ぶっちゃけると喧しい。
 くそっ、胸の内で盛大に毒付いて、アノイは振り返った。
「オレに構うなと言っている!」
「テッド君、そんな事言わないでよ」
 後ろでやり合っている二人を、アノイは白い目で見て、盛大にため息を吐いた。
「で、君らは何で僕の部屋に居るわけ」
「お前リーダーだろ、コイツを何とかしろ」
「テッドくーん!」
 言いたいことを言ってしまえば、テッドは直ぐにアルドとの(割と一方的な)言い合いに戻ってしまう。もう何がなんだか分からない。
 アノイはどこか壊れたような笑みを浮かべた。10分もよく持った方だろう。
「貴様等の言い分はよく解った」
 テッドとアルドの言い合いがぴたりと止む。
「十秒時間をくれてやる。とっとと俺の部屋から失せるがいい」
 左手に不穏な輝きを湛え、アノイは顎で扉を示した。
 一瞬の間を置いて、二人の心はシンクロする。
 我先にと退け合って、狭い扉から駆け出した。

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初お披露目、アノイさん。ちょー人間嫌いさん。
テッドは彼を騒動(人との関わり)に巻き込みたくて仕方ないといい。(人間大好きで結局ほっとけない)
でも引き際は弁えてるのね(笑)
アノイは滅多にキレないけど、キレると一人称三人称が変わりますよ








薔薇

「フリックー、コレあげるー」
 エデルは両手に薔薇の花を抱えて、フリックの所までパタパタと音を立てて駆けてきた。その後ろに続くのは、英雄の親友であるテッドだ。
「また立派な薔薇だな」
「えへへ、お裾分けだよ」
 そう言ってエデルは薔薇を数本手渡した。
 釣られて笑うフリックに、ビクトールを茶化す。
「お裾分けだとよ、プレゼントじゃなくて残念だったな」
「阿呆ぬかせ」
 それを微笑ましそうに見ていたテッドが、思い出したように言う。
「そうだ、花粉に気をつけろよ」
「は?」
 間抜けに問い返したフリックにテッドは続ける。
「毒がある」
「はぁ?!」
「ちょっと待て!」
 飛び出した台詞に腐れ縁は叫んだ。
「ミルイヒの所から貰って来たんだ」
 両手いっぱいの薔薇に、満面の笑顔で首を傾げるエデル。絵にはなる。が、薔薇には毒がある。
「そんなに顔を近づけるなっ!」
 きゃーともわーともとれない悲鳴を上げながら、ビクトールが喚く。無理も無い。
「大丈夫だよ。僕はロイヤルデモンローズに耐性があるから」
「なんで毒に耐性が、ってか作品違うし!」
 何処から突っ込めばいいのか、フリックは混乱している。(混乱ステータスに免疫が低い)
「それに武器にもなるんだぜ」
 少々減なりした様にテッドが言う。相変わらずエデルは笑っていた。
「曲がりなりにも貴族だからね。ね、見ててみてて」
 言うが早いかエデルは一本の薔薇を抜き取ると床と水平に手を薙いだ。タンッといい音がして、ビクトールとフリックは恐る恐る背後を見る。
 壁に、薔薇の花が一輪、咲いていた。否、突き立っていた。
「………………」
「………………」
 額にジンワリと汗が浮かぶのを、二人は体感する。
 ただの薔薇の花だよな、毒はあっても
 なんで壁に刺さるんだよ
 いやもう、鞭にするとかやられても許容できるんじゃなかろーか
「やだな、僕は人間だよ」
 渇いた笑いを漏らすテッドの横で、エデルは笑顔でそう漏らした。
 てか、人の心を読まないで下さい
 二人は切実にそう思った。

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年がバレます(笑)若い人にはごめんなさい
そしてネタが分からなかった人もごめんなさい
葱は自分の知ってるネタしか書きません(マテ
あ、究極のナルシー台詞を入れるの忘れた………!!(もっとマテ








好きな人の好きなところを一つ大きな声で叫びましょう
それから走っていって抱きついて下さい


 たまたまリオウとテッドが大広間で話をしていたとき、それは起こった。
「テッドー!」
「エデル?」
 上へと続く階段の踊り場から、エデルがテッドの名前を叫んだ。声量があり何事だと広間に居た者達の視線も当然集まって、いたたまれなくなったのは呼ばれた方のテッドだった。
 リオウに断ってからエデルの所に行こう。そう思って動こうとした瞬間、エデルが再び口を開いた。
「テッドのぉー、分け隔て無く誰にでも優しいところぉー、ちょっと嫌だけどぉー!」
 いきなり何をいいだすんだ!
 テッドは瞬間冷凍される。固まってしまったが故に、エデルの次の言葉を遮ることが叶わなかった。
「そんなところも大好きだー!!」
 遠目に分かるほど顔を赤くさせて、エデルはワンテンポ置いてその場から脱兎の如く逃げ出した。
 テッドはテッドで一瞬何を言われたのか理解できず、こちらもワンテンポ置いてから顔が真っ赤に染まる。
「……テッドさん」
「あ……ぅえっ?!」
 リオウに呼ばれ、我に返って勢い良く振り返る。
「エデルさん行っちゃいましたけど、追いかけなくていいんですか?」
「わ、悪ぃ!」
 リオウに言われて、テッドは弾かれたように走り出した。


エデルとテッドの場合
→羞恥心が勝りエデルが逃げる

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ゲセンで見つけた小ネタ。
ハニカミプランから借用。
面白そうだったから書いてみた。
後悔はしていない。
坊に夢見てますがそっとしておいて下さいorz







好きな人の好きなところを一つ大きな声で叫びましょう
それから走っていって抱きついて下さい


 リオウは軍の先頭に立ち、馬上に腰を据え、軍旗をはためかせる。幼さの残る顔には、凛々しく強い面差しの双眸が前を見据えていた。
 相対するハイランド軍を一望した後、軍の一点を注視したリオウは側に控えていた兵卒に小さく何事か耳打ちし、軍旗を預ける。
 そして自ら馬を駆り、隊よりも前に出て姿勢を正し、叫んだ。
「ジョウイ!」
 澄んだボーイソプラノが戦場の張り詰めた空気を震わせる。
「それでも僕は、お前が好きだー!」
 あまりに場違いな台詞に、割と近くにいたルックがつんのめった。
 直接戦いはしないけれど、場には出ていた隣国の英雄も何とも言えない笑みを浮かべた。
 後ろの方で、軍師の叫ぶ声が聞こえるような気がしないでもない。
 気が済んだらしいリオウはくるりと身を返し、元居た場所へと戻っていった。


「リオウ! っくそ、離せ! 離してくれ!」
「ダメです、落ち着いて下さい」
「あんた一応皇王なんだぜ、迂闊な事すんな!」
 敵方本陣にて双将に取り押さえられる皇王が見られたとか、無かったとか。
「リオウ、リオーウ!」
 ジョウイの叫びだけが虚しく響いた。

ジョウイとリオウの場合
→第三者と状況に阻まれます

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ゲセンで見つけた小ネタ。
ハニカミプランから借用。
ジョウイ情けなすorz
主が男前過ぎていっそ清々しい。
ハイランドの明日はどっちだ。







好きな人の好きなところを一つ大きな声で叫びましょう
それから走っていって抱きついて下さい


 険しい顔でテッドはアノイを睨めつけて、ぎりりと歯を噛み締める。そんなテッドを見ても、アノイはいつもと変わらず涼しい表情で、自分を睨む彼を眺めていた。
 どれくらい睨み合っていただろうか、静寂はテッドの舌打によって破られる。
「オレはお前の、取り澄ましたみたいなとこが大っ嫌いだよ」
 吐き捨てる様に言われた言葉に、アノイは特に反応を示さず、小さく「そう」と漏らしただけで終わった。
 嫌い等とは言われ慣れているし、もっと酷い言葉を投げつけられた事だってあった。
 人に何かを期待する事はもうなくなっていたし、出来れば関わりたくないと自分自身が心底思っている事も自覚している。
 総合しても、自分がテッドに嫌われる事に得も損も見受けられない。
 テッドが自分を嫌いと言っただけ。
 アノイに取ってただそれだけの事だった。
 特別変化の見られないアノイに、テッドが表情を険しくしてもう一度舌打する。
「それだけ? なら僕はもう行くよ」
 小さく首を傾げて、アノイはそれだけ言い放つ。
 人から妙な期待を押し付けられてしまっていて、自分はそれなりに多忙なのだと、アノイはそれを自覚している。さっさとこの場を立ち去って、やらなければならない仕事を片付けてしまいたかった。
 踵を返したところでテッドに腕を掴まれて今度は何事だと振り向けば、掴まれた腕事引き寄せられて抱き締められる。もう一体なんなのだ、アノイは一つ溜め息をついた。
「テッド」
 自分の言葉に自分で傷ついていれば世話は無い。テッドの言葉でアノイが傷つく事はなかった、それだけなのに。
「なんで何も言い返さないんだよ……」
 途方に暮れたような声で漏らしたテッドに、アノイは諦めた様にもう一つ溜め息をついてからテッドの背をあやした。


テッドとアノイの場合
→アノイ圧勝。というかテッドが告るはずがない

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ゲセンで見つけた小ネタ。
ハニカミプランから借用。
書いた事を後悔はしていない。多分。
テッドがツンデレ。4様もツンデレ、というかデレが無いorz
なんだかCPが書けない見本市のようだ……






 くっそどうしてこんなクソ面倒くさい書類なんかやらねばならんのだシュウに文句言えば軍主の務めだとか抜かしやがるし全く以て糞くらえだ前は替わりの軍主は幾らでもいるとか言ってやがったのにじゃあそいつを立てて僕はお役御免だな!とか抜かしたらぎゃんぎゃん喚き散らしやがった癖に最近はちっとも言いやしねぇやっぱあれか僕が荷物まとめて出てこうとしたのに危機感でも覚えたかあー失敗したあん時にさっさと逃げ出してれば今此処で面倒な書類と向き合うこともなかったのかほんと今からでも丸投げしてナナミ連れてどっか遠くまで逃げ出してやろうかジョウイだったら追いかけて来ないだろうしってかさっさと逃げろみたいな事いってたし結局突き詰めれば僕には同盟側の事情とか丸っきり関係なくね義理も何もないのにどうしてこんな面倒臭いことやってんだ丸っきり馬鹿じゃんよし決めた此処を出よう!
「リオウ入るよー?」
「あ、はい。何でしょう」
「書類仕事ばっかりで疲れたでしょ? テッドがマフィンを焼いたから少し休憩にしようよ」
「素敵なタイミングですエデルさん、シュウに呪詛を吐いてた所だったんですよね」
「あはは、気持ちは分かるけどね。みんなでお茶だよ、一息いれようよ」
 やっぱり此処の人たちが、この人たちが好きだから、もうちょっとがんばってみようと思うのだ。


やる気の持続


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暗黒面がちらちら。
ドカンと派手にいかないのはナナミがいて坊がいてみんながいるから。
どんなに擦れてきてても結局みんなが大好きですよ

お題提供:Abandonさま『web拍手お題』より






 特別に何かあるとかじゃなくて、ただの昼下がりの中庭を、こうやって手を繋いで引っ張って引っ張られて歩いて、いい天気でぽかぽかしてて、蝶々が舞ってたりとかして、誰かが笑ってたりして、ああ幸せだなって思うんだ。
 歩き続けた先の途に何もない未来が待ってたとしても、掴んだすべてがこの手から零れ落ちてしまったとしても、志半ばでこの命を散らしたとしても、たとえ何もかも無くしたとしても
「なに考えてんだよ」
「った! 酷い、いきなり殴らないでよね」
「突然黙り込む奴が悪い」
「なにそれ……ねぇ、テッド」
「あ?」
「僕たち、友達だよね?」
「お前そんな事考えてたのかよ、当たり前だろ?」
「うん」
「もうぜってー置いてったりしないから、な?」
 ぎゅって強く手を握ってきたテッドに、僕は笑う。
 テッドが死ぬときは僕も連れていってくれるという約束に、嬉しくなる。
 何もいわなくても僕の欲しい言葉をくれる、テッド。


だから、嬉しいんだ。


******

笑顔で鬱。エデルのデフォルトですな。
テッドは坊にもう置いてったりしないと約束してればいい
いつでも一緒にいればいいよ

お題提供:Abandonさま『web拍手お題』より







 食事を黙々と取っていたアノイが突然ぴたりと動きを止めた。その止まり具合に不信に思った(斜向かいに押しかけて座っていた)テッドは声を掛けようか素で悩んだ。
 周りをキョロキョロ見回し始めた時点で彼の横に陣取っていたハーヴェイがギョッとしたようにアノイを見た。辺りを見回すアノイはかなり挙動不審だ。
「アノイ、どうかしたか?」
 主にお前の頭とか。テッドは心の中でハーヴェイの台詞に勝手に付け足す。
「いや、いま何か……」
 気の所為か、と呟き掛けた所ではっと目を見開き手にしていたスプーンを取り落とした。
 微妙に静まったその場にスプーンが落ちた音が響いているような錯覚すら覚える。
「う……」
「アノイ様?」
 アノイの向かいに座っていたシグルドが尋常ならざる雰囲気に問い掛ける。
「宇宙の海は俺の海……?」
「は?」
 何を言われたのか分からないシグルドは間の抜けた声を出す。
「訳わからんわっ!」
 とっさにテッドが突っ込む。
「受信したんだ」
「何をだよ」
「ビビッときたんだ」
「答えろよ」
「友達になれそうな気がする」
「誰とだよ」
 アノイとテッドの会話になっていない会話を呆然と眺めていたハーヴェイに、通りがかりらしいケネスが尋ねる。
「なんだ、アノイはまた受信したのか」
「ま、また……?」
 よくある事のように言われ、ハーヴェイは頭を抱えたくなる。
「時々突然受信するんだ。神よ、私は美しい。とか恐ろしい子!とか色々あったな」
「へ、へぇー」
 うちのリーダーは大丈夫なのだろうか。柄にもなく本気で心配になったハーヴェイだった。
「で、今度は何だよ」
 えらく真面目な顔で目を閉じていたアノイにテッドは尋ねる。
「偶には僕からも送ってみようと思った」
 だからやったのだとアノイは一人頷いてみせる。
「因みになんて送ったんだ?」
 どうして送れるとか、そういうのは突っ込んでも無駄だと悟ったテッドは敢えて流す。
 しかし帰ってきた返答には、もれなく突っ込んだ。

「何やってんだ、エデル?」
 窓から空を見て、胸の前で両手を組んでいるエデルにテッドは尋ねる。
「ちょっとねー」
「お星様にお願いでもしてたのか?」
「似たようななものかな? ちょっと念を送ってたんだ」
「は?」
 嘗て、同じ様な台詞を宣った奴が知り合いにいたような気がする。
「因みに、どんな?」
 果てしない嫌な予感を振り切って、テッドは尋ねる。
「宇宙の海は俺の海、かな」
 予想通りの答えが返ってきて、テッドは己の顔が引き釣るのを自覚した。
 アレの相手はコイツだったのか!?
 テッドが目眩を覚える中、エデルはふと思いついたように明後日の方を見て首を傾げて呟いた。
「……命を捨てて、俺は生きる……?」
「生きてるのか死んでるのかはっきりしろよ……」
 テッドは百五十年と同じ言葉を、今度は力なく呟いたのだった。


届け、電波!

******

電波な話を目指しました。
というか、今回の拍手はみんな電波だな!
みんなみんなでんぱになぁれ!
この設定を引き継いで4様と坊と会わせたいな!
天魁星はみんな受信します(笑)

因みに散りばめられたネタ全て分かった方、ご一報を。
葱が書くへたれSSを進呈いたします(いらねー!)

お題提供:Abandonさま『web拍手お題』より

(麻にみんなみんなでんぱになぁれ!とか怖い事いってんじゃねえといわれました。)