突然の事にロイは目を見開いて、離れていく王子の顔をまじまじと見つめた。
 それから漸くキスされたのだと理解して、みるみるうちに顔を赤く染めていく。
「ご、ごめん」
 自分から仕掛けたはずの王子だったが、赤くなってしまったロイを見ていたら何だか自分まで恥ずかしくなってきてしまって。思わず口に手を当てて、赤くなった顔で俯いた。
「なんであんたまで赤くなってんだよ……」
 意味わかんねぇよと呟いて、耳まで真っ赤になったロイは頭を抱えるのだった。
「だって不意打ち……」
 少しは落ち着いたらしく顔はあげたものの、ロイを直視できないで居る王子は、横目でちらちらとロイを見る。
「それはこっちの台詞だっつーの……」
 大きくため息を吐いて、ロイはまだ赤さが抜けないまま苦い顔をして王子をみた。
「だって僕からキスしたらだめなんて、不公平だろ」
 こっちもやはり少し眉を寄せて、拗ねたような顔をして王子はいう。
「んなこと言ってねぇ」
 わしわしと頭を掻き回して、ロイはぶっきらぼうに呟く。
「だって王子さんからキスなんて、あんまりしてくれねぇし」
 ちょっと吃驚しちまったのだと、ロイは照れくさそうにはにかんだ。
(だから反則だってば)
 不意打ちの笑顔に、王子は顔が赤くなるのを感じつつ明後日の方を向くのだった。