英雄の手紙
君たちがこれを見つける頃には、きっと僕はこの新しい国を離れていることと思う。 まずはおめでとう。僕と君たちは最良を選び積み重ね、これを勝ち取ることができた。これは誇れることであるし、偉業といえるだろう。君たちの掴み取ったものである。大切に先へと繋げていって欲しい。 僕を指導者へと据えようと思っている者が若干名居ることを知っていたけれど、僕が民を率いていくだけの器では無いことは僕自身身に沁みて感じている事である。 民を率いる者には確固たる信念が必要だ。己を信じ、正しいと信じるものがなければ何者も着いて行きはしないだろう。 僕は戦線中、最良であるものを選んできたと思う。そのつもりであるし、その時にそれ以上の手があったとは思えない。 この戦いで僕たちは沢山のものを失った。沢山のものを犠牲とした。最良であったと思う。けれど、僕にはそれが正しかったのだと明言できない。それはとても失礼な事だと理解しているけれど、どうしてももっと良い手があったのではないかと考えてしまう。 これは僕の弱さだ。 僕には何が正しいのかわからない。これは致命的であると思う。正直な話、僕が先導者であった事が本当に正しかったのか、未だにわからないでいる。 ここからは僕の為にも最良を尽くそうと思うのだ。無責任と罵られるかも知れないが、君たちにとってもきっと良いことであると思う。 君たちの先だ。君たちが掴み取った未来だ。 君たちの正しいと信じる道を歩んで欲しい。 君たちの最善を祈っている。 |