7.
 僕の持ち込んだ手紙をまじまじと見て、ティルさんは少しだけ苦笑してみせる。
「これは、テッドだね」
「…………え」
 ティルさんが口にした名前が意外で、そしてあり得ないはずの名前を聞いてしまって、僕は一瞬反応が遅れる。固まっている僕を置いて、ティルさんはテッドの字だと断定する。
「ごめんね、驚いたよね」
 アイツ、悪戯好きだから。何でもない事のようにそう言われて、そう納得してしまいそうになりつつも僕は言葉を返す。
「え、と、テッドさんって……」
 亡くなった方ですよね、とはさすがに言えなくて。途中で言葉を区切った僕に、ティルさんはなんだか当たり前のように切り出した。
「姿は見えないんだけどね、今此処にテッドは居るよ」
「…………それは幽霊ってヤツですか?」
「どうなんだろうね。僕には彼らが幽霊とは少し違うように思うけど、普通からしたら幽霊と一緒なのかも知れないね」
 ティルさんは穏やかに笑って、そう言った。僕には幽霊かどうかのその違いは分からなかったけれど、そこにテッドさんが居るのだと言う事は不思議とすんなり理解した。その事実は自分の中に、驚く程すんなりと落ち着いた。
「幽霊じゃないんですか?」
「うん。といっても、多分僕以外にはあまり関係ないと思うし、結局そう変わらないのかも知れないから」
 ちょっと困ったように眉が寄って、ティルさんはそう言う。だから僕は聞いてみた。
「どう違うんですか?」
「聞いてどうするの?」
 ティルさんは少しだけ興味を示したように聞いてくる。だから僕は正直に答える。
「どうもしません」
 ただ僕が聞いてみたいだけだった。特に理由もないし、どうしようと言う気もない。そう言うと、ティルさんは興味深いというように笑って、
「みんな、ソウルイーターに属しているようだから」
そう言ったのだった。


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